こんにちはー!
今回は藤野直人さんとスター農家Hさんの「これからの農業は組織で勝つ」の本を要約していきます。
本書は、はじめにと章の始まりが藤野直人さんとスター農家Hさんの対話形式で始まり、わかりやすく読みやすくなっています。
そして、この本は組織で農業をしている人やこれからする人にオススメの本です。
「はじめに」でスター農家Hさんは「組織さえ作れば、農業なんてこれからいくらでも仕事は来るよ」と言っています。
また、「狙い目は農業と観光業。農業の成功事例は表にあまり出ないが、実はごろごろ転がっている。また、観光業界はパンデミックで落ち込んだが、外国人がお金を落としたくなるスポットはまだ日本にたくさんある。」とニュースで取り上げられていました。
ということで、本書のここは重要と思うとこを自分なりに3つのポイントで要約していきます。
- 組織力で勝負する時代へ
- 儲かるポイントを理解する
- デザイン・ブランディングで組織の見せ方を作る
組織力で勝負する時代へ
まずポイント①の「組織力で勝負する時代へ」です。
農家とバイヤー、シェフなどとの関係で、「取引」ではなく、「取り組み」をしたいというところが増えているように感じると著者は言っています。そうなると「モノ・商品」もですが、「ヒト・組織」が重視されるようになります。
勝負するポイントが販売力や商品力ではなく、組織力になってきているのです。
「価値のあるもの」を「識別できる」形で販売して、いつでもその品質やお客様が求める量を「保証できる」体制が必要です。
これも組織力の問題です。
これからの農産物取引は、組織ができているところに話が行くという認識を持つことと、これからの農業は販売力、商品力から組織力で勝負することが重要です。
儲かるポイントを理解する
次にポイント②の「儲かるポイントを理解する」です。
ここでも3つに分けて書いていきます。
生産現場に立ち戻る
著者はこのようなスローガンに違和感があると言っていて、そのスローガンについてこう書かれています。(枠の中がスローガンです。)
「少量多品目で消費者直結やりがいのある農業を」
少量多品目でやると収量が上がらないほか、消費者に作物を直接送るB2Cは手間がかかりすぎます。
「安心安全な有機農業を普及させよう」
有機農業は、収量が低くて人件費がかかる割に、単価が見合いません。
「これからの農業は大規模に植物工場に設備投資を」
植物工場は、理論値通りに収穫できても売り先がないので、単価が維持できません。
「理念・ビジョンを掲げて、研修生がたくさん集まる農場に」
独立したい研修生が集まる農場も良いのですが、社員としての人材をきちんと育成・定着させることができないと、1人当たりの生産性・収益性は向上しません。
「6次化で、付加価値を高めて、百貨店や高品質スーパーに!」
6次産業に挑戦すると言って、加工品を作ってみても、食品メーカーには勝てません。
「攻めの農業で、これからは海外輸出に取り組もう」
消費者のこだわりが強く、所得も高く、物流的にも無理がないのは国内マーケットです。
著者はストーリーがあればいいと言っています。すべての整合性、辻褄があっていれば「少量多品目」「消費者直結」「有機農業」「植物工場」「研修生がたくさん集まる」「6次産業化」「海外輸出」が事業のポイントだというのは理解出来ます。
しかし、農家にとって中長期的に強みにできる、真の差別化の源水は、「生産現場」にしかないと言っています。
農業経営の方程式は「単収×単価×規模(面積)」が売上、コストの「人件費+減価償却費(設備投資)+その他経費」を差し引いたものが収益です。
生産現場が強ければ、単収も上がるし、A品率のアップや高品質が実現して「単価」アップに繋がります。
また、規模の拡大もでき売上の拡大が可能で、さらにはコストにも好影響です。
1人でカバーできる農場の面積が増えれば、売上に対する「人件費」の比率が下がったり、規模に即した有効な設備投資により売上に対する「減価償却費」の比率が下がったりして、経費を抑制できます。
すべては「生産現場」に関わることです。
栽培品目の単価維持
「成長カーブ」という考え方があります。商品には導入期・成長期・成熟期・衰退期があり、成長期の商品、つまりは需要のある商品であっても、放っておくと成熟期、衰退期に移行すると、という考え方です。
いくら生産現場が強くても、マーケットにおける商品の魅力がなくなってしまえば、成長は止まります。
本書ではこの3つの特徴があればOKと書かれています。
- 商品の特徴
- 販路の特徴
- 経営の特徴
これらを組み合わせて「当面はこれで成長できそうだな、組織づくりして規模拡大しても、単価は維持できそうだな」と思えたらOKです。
選果選別・箱詰め・出荷工程を見直す
選果選別・箱詰め・出荷の工程を自動化、ないしは高速化、省力化できれば生産現場にもっと労力を割けます。
選果選別・箱詰めは農業経営の製造原価の中でもコスト割合が大きい部分です。
例えばニラの場合だと、作業労働時間は「そぐり」という出荷する際に外側の葉を取り除く作業に約80パーセントの時間を使っています。
圃場の準備、育苗、定植、追肥・灌水、その他管理、収穫、ここまでの作業が20パーセントで、出荷調整作業が80パーセントです。
これが、選果選別・箱詰め・出荷の工程に儲かるポイントがあるという理由です。
儲かる方法は意外とシンプルで「規格の簡素化」だと著者は言っています。
そもそも、農協や市場の規格は細かすぎます。しかし、これは産地側がより有利に販売、高く販売したいがために細かくしていったという経緯もあるので、農協や市場が悪い、産地が悪い、という話ではありません。
ただ、シンプルに考えれば、自分が対象としているお客様にとって、どういった規格であればいいかということです。
具体例として、
農協出荷の際は、大きさや見た目、長い・丸いなど47あった選別規格から、直販に切り替え、9規格(特大・大・中・小、それぞれのA・B、加工用)にすれば儲かります。
100g束で40束入れて1ケース4kgとしているものを、業務用で1kg袋で10袋入れて1ケース10kgにすれば、儲かります。
大きかろうが小さかろうが、1ケース50本としてしまえば、儲かります。
これらは、お客様が「それでOK」と言えば、という前提ですが、差別化商品で、かつ特定の顧客をターゲットに出荷しているのなら規格を簡素化できる可能性はおおいにあります。
また、その規格を買ってもらえる取引先を探すというのもひとつの手です。
規格の簡素化以外にも儲かる方法があり「コスト削減」と「差別化」の2種類に分けられると本書では書かれています。(規格の簡素化はコスト削減につながる取り組み)
・規格の簡素化
(上記記載)
・集約化
水菜、小松菜、ほうれん草のパック詰めラインを、複数の農家で作業を集約化し、効率化する。
・熟練(スピードアップ)
ネギの調整作業において、外国人技能実習生の技能向上や熟練パートの育成を実地し、作業スピードを向上させる。
・機械化
ニラの出荷に際して、「そぐり」という収穫後の工程を一部自動化する、そぐり機を導入し、コスト削減を図る。
・規格の多様性
規格の簡素化とは逆に、水菜を30g、80g、100g、150g、200g、500g、1kgなど細かい単位で調製・出荷し、顧客の要望に応じる。
・客観化
トマト農家で糖度センサーを導入したり、柑橘農家やさつまいも農家で重量選別機を導入することで品質や規格を、単に「甘い」とか「フルーツみたい」といった主観的な表現ではなく「糖度8度以上」のように客観的に打ち出せるようにして、お客様との信頼構築を図る。
・貯蔵施設
長芋やさつまいもの貯蔵施設を整備し、1年を通じて出荷できる体制を構築する。
選果選別・箱詰め・出荷の工程で儲かる方法を7つの切り口から紹介しました。
生産工程現場においては、もちろん畑も大事なのですが、品目によってはこの工程の比重が非常に高いです。
ここでは「強い生産現場」「品目の単価維持」「選果選別・箱詰め・出荷の工程」の儲かる3つのポイントを要約しました。
デザイン・ブランディングで組織の見せ方を作る
そしてポイント③「デザイン・ブランディングで組織の見せ方を作る」です。
「だれに」「どう見られたいか」を意識してそれを対外的、あるいは組織内部に発信しないともったいないです。
例えば、
- 取引先のバイヤーに、農場や経営体をどう見られたいか?
- 会社で働く人達から、どう見られたいか?
- 投資家や金融機関から、どう見られたいか?
などは非常に重要です。
また、販売に直結する部分の見え方を考えることも大事です。
商品のパッケージやネーミング、POPなどの販促ツールは、多くの人の目に触れるものなので、見せ方を変える際、最初に手を付けたい部分だと本書では書かれています。
次に名刺や会社案内、封筒をきちんと作り、ロゴマークも必須アイテムと言えます。
そして商談時や他の農園への視察の際には、ユニフォームで対応するなどデザインはさまざまなとこで重要になります。
ウェブサイトは採用活動を意識した内容にするのがおすすめです。
BtoBで農産物や食品を販売する場合、ウェブサイト上で商品情報や取引条件を伝え、それで商談が決定するケースは少ないはずです。
販売先を訪問したり、農場に来てもらったりして、信頼関係の醸成や諸条件のすり合わせをしていきます。
となると、ウェブサイト上には、商品情報よりも、「採用」に関する情報を豊富に掲載したほうが、販売取引先からの印象が良くなります。
BtoBの営業の場合よいバイヤーであれば商品の良し悪しより、経営の良し悪しを気にします。取引ではなく、一緒に「取り組み」ができる相手を探しているからです。
であれば、ウェブサイトで発信する内容は「商品」よりも「採用(組織)」に関する情報のほうが絶対におすすめです。
だんだん余裕が出てきたら、働いている職場そのものの見え方を意識することと著者は言っています。
オープンでコミュニケーションが活発な組織風土を目指すなら、それに適した部屋割やオフィス家具、静かで業務に集中できる雰囲気を組織の風土として実現していきたいなら、それに適した職場環境づくりを考えます。
まとめ
この記事のまとめとして、
ポイント①では、これからの農業は販売力、商品力から組織力が重要ということ。
ポイント②では、儲かるポイントを理解するということ。
ポイント③組織の見せ方を紹介しました。
ということで、藤野直人さんとスター農家Hさんの「これからの農業は組織で勝つ」の本を要約していきました。
この記事では本書のほんの一部しかお伝えできていませんのでもっと詳しく知りたいなと思った方はぜひ本書を手にとって読んでみてください。
最後まで見ていただきありがとうございました。